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2010.06.05

相続その2ー相続放棄・限定承認・単純承認について

被相続人の死亡により相続が開始すると、相続人は被相続人の一身に専属したものを除き、被相続人の財産に属した一切の権利義務を承継します。しかし、相続財産の中には、不動産などのプラスの財産もあれば、借金のようなマイナスの財産もあります。

したがって、債務が積極財産を上回るケースもあり、この場合にも相続人にこれらの権利義務すべてを承継させると酷な結果となります。また、積極財産の方が債務より多くても、相続することについて潔しとしない人がいるかも知れません。

そこで民法は、相続の放棄と承認の制度を設け、相続人に対して、被相続人の権利義務を承継するか、あるいは拒否するかの選択権を与えました。①相続放棄とは、相続による権利義務の承継を拒否することです。

相続の承認には、②条件をつけずに全面的に被相続人の権利義務の承継を認める単純承認と、③被相続人の債務は、相続によって得た財産を限度としてのみ責任を負い、相続人の固有財産をもっては責任を負わないという限定承認、の2種類があります。

 

相続放棄

相続放棄は、自己のために相続の開始があったことを知った時から3ヶ月以内に家庭裁判所に相続放棄の申述をする方法によって行います。

この3ヶ月の期間は熟慮期間と呼ばれ、この間に、相続人が被相続人の財産関係を調査してその内容を把握し、相続放棄等をするべきかを検討するのです。3ヶ月の期間だけでは相続財産の調査が完了しない等の事情がある場合には、家庭裁判所へ熟慮期間の伸長を申請することも出来ます。なお、相続人が数人あるときは、熟慮期間は、各相続人ごとに進行します。

相続放棄は、家庭裁判所への申述という方式によってしなければなりません。相続放棄をしようとする者は、被相続人の住所地または相続開始地の家庭裁判所に対して、「相続放棄申述書」を提出する方法により行います。この申述が受理された場合、家庭裁判所から「相続放棄申述受理証明書」を出してもらい、相続債権者からの請求に際しては、右証明書を提示するなどして、その支払いを拒否することになります。

相続放棄をした者は、その相続に関しては、初めから相続人でなかったものと見なされます。

したがって、たとえば被相続人の子らが全員相続放棄をした場合、それまで相続人でなかったはずの、直系尊属、あるいは兄弟姉妹やその代襲者が相続人となる場合がありますので、これらの者に対する配慮も必要となります。

 

限定承認

限定承認は、相続財産の限度でのみ被相続人の債務や遺贈について責任を負うという限定つきで行う相続の承認です。

相続人が限定承認をしようとするときは、自己のために相続の開始があったことを知った時から3ヶ月以内に、財産目録を調製して、相続人全員で家庭裁判所に対して限定承認をする旨の申述をしなければなりません。したがって、相続人の中に限定承認に反対する者があれば、他の相続人も限定承認をすることが出来ません。

限定承認をした場合、相続財産の管理と清算手続を行わなければなりません。一般的には、家庭裁判所が財産管理人を選任し、その者が相続人全員に代わって、相続財産の管理と清算手続を行います。

 

単純承認

被相続人の権利義務の承継に関して、何の留保もつけずに全面的に被相続人の権利義務の承継を承認する単純承認の場合、家庭裁判所への申述は特に必要ありません。ただし、民法は、法定相続人の単純承認の意思表示がない場合にも、一定の事由があれば、単純承認をしたものと見なす法定単純承認という規定を設けています。

法が単純承認と見なすのは、相続人が

  1. 相続財産の全部または一部を処分した場合(ただし保存行為や管理行為は除かれます。)
  2. 3ヶ月の熟慮期間を徒過した場合
  3. 相続財産の隠匿・消費などの背信行為をした場合です。
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