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2017.07.26

請負契約の仕事の未完成と報酬請求権

請負契約は、特約のない限り、請負の目的である仕事が完成しなければ、その報酬(請負代金)を請求することが出来ないのが原則です。
しかし、請負契約がその完成前に履行不能となった場合や工事の途中で解除されたなどの場合で、特約がない場合であっても、報酬を請求しうる場合があります。

1 注文者の責に帰すべき事由により仕事の完成が不能になった場合

仕事が完成しない間に、注文者の責に帰すべき事由によりその完成が不能となった場合(例えば注文者の都合で残工事を拒否したような場合)には、請負人は、自己の残債務を免れるが、民法563条2項によって、注文者に請負代金全額を請求することが出来ます。ただ、自己の債務を免れたことにより得た利益(例えば残工事にかかる労力や材料費等の価額)を注文者に償還すべきであるとされています。

2 当事者双方の責に帰すべからざる事由により仕事の完成が不能になった場合

このような場合、民法536条1項により請負代金は消滅し、かつこの場合には、請負人が支出した費用の償還請求も出来ないとされています。
但し、請負人の施工した既施工部分の給付を受けることが注文者にとって利益があるような場合(例えば土地の整地などの段階で工事が終わったとしても、そのことにより注文者に利益があると認められる場合)には、請負人にはその出来高に応じて報酬請求権があると考えられます。

3 請負人の債務不履行により請負契約が解除された場合

請負人の責に帰すべき事由(例えば請負人の懈怠により工事完成が予定期限に間に合わないような場合)によって、工事途中で注文者が請負契約を解除した場合で、既施工部分が注文者にとって全く利益にならない場合、請負人にその出来高に応じた報酬請求権などないと考えられます。それが仕事の完成に対して報酬を支払うという請負契約の原則に則しているし、そのように考えても何ら不合理がないからです。

これに対し、既施工部分が、注文者に相応の利益をもたらす場合、殊に注文者が契約解除後、別の第三者と請負契約を締結し、既施工部分を利用してその残工事を完成させたような場合には、工事内容は可分であり、未完成部分についてのみ請負契約の解除を認め、既になされた工事部分については契約解除を認めないものと解釈し、もとの請負人に既施工部分について出来高に応じた報酬請求権が認められるべきです。
但し、請負人のした既施工部分によっては、注文者が、請負契約の目的を達することが出来ないような場合(例えば、既施工部分がごくわずかであったような場合)、請負契約全体の解除が認められ、出来高報酬請求も認められないと考えられます。

なお、請負契約が工事未完成のまま合意解除された場合や契約解除されないまま紛争になった場合でも、上記出来高報酬請求の考え方は流用できます。

また出来高報酬請求権の考え方以外にも、不当利得返還請求権や損害賠償請求権の問題として当時者間の損失の公平な分担を図りうる場合があると考えられます。

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